第8章

酒井初音が御影邸へ戻ると、引っ越してきた荷物が主寝室の前の廊下に放り出されていた。

少女はすっと歩み寄る。しなやかな影。

ちょうどそのとき、三村正明が部屋の中から、初音が久世直哉のために用意した最新の医療キットを提げて出てきたところだった。床へ投げ捨てようとしている。

初音は眉を寄せ、低く制した。

「三村正明。それ、御影さんの脚の治療に使うものよ。捨てる気?」

前世の記憶があるせいで、初音は反射的に「また三村が自分を狙っている」と決めつけてしまう。

三村としては冤罪もいいところだが、それでも恭しく頭を下げた。

「……御影社長のご意向です」

今回は「奥様」と呼ぶ勇気がない。御影...

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